プロレスラーにも安保について叫んでほしい

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少し前の話になるが、元プロレスラーの高田延彦の反安倍・安保法案のツイートが話題になった。

【参考:リテラ「高田延彦の安倍・安保法制批判ツイッターが話題! 元スポーツ選手には珍しい反権力姿勢」】

プロレスラーというのは本質的に、何か反常識(と考えられているもの)・反権力に向かう部分があると感じるし、人々の心の声や渇望を代弁する役割を持っている。それが魂の共鳴、解放、カタルシスとして人々に感動を与えている(と私は思っている)。

しかし、この高田のように安保や戦争に対して反対を表明するツイートをしているプロレスラーは見当たらなかった。少なくとも私のフォローしている選手たちの中には、それらしきものは見られない。

だからと言って失望するわけでもないのだが、どうにも腑に落ちない。

というのは、同じような精神性を持ち、パフォーマンスを通して聴衆とカタルシスを共有するロックミュージシャンは戦争や安保に対して声を上げる人も多いからだ。

何が違うのか?おそらく、歴史と利権の束縛である。

昔から格闘技やスポーツというのは政治家たちに保護されてきた部分がある。そして、政治家に転向したスポーツ選手も数多くいるが、その多くは保守的政党に行き、最たるものが自民党である。見えるところ、見えないところで保護され、後援されている以上、義理を欠くことは難しい。上下関係にうるさいプロレス界ではそれも仕方ないのかもしれない。

しかしながら、いざ安保の解釈が進み、徴兵も行われるようになるならば、選手たちも当然その対象である。

圧倒的な体躯と基礎体力をもち、格闘術に長け、痛みやケガを恐れないように自分をもっていけるメンタリティ、これらの要素を兼ね備えた戦士が前線にいれば、特にゲリラ戦の状況下では重宝されることだろう。誰もが戦力として期待し、当然戦線に行ってほしいと願うだろう。

だが、当のプロレスラーたちからは安保が自分たちに関わることとして聞こえてくる発言は聞こえてこない。業界の中で、何かしらの言論統制がなされているのかもしれないと思うと何かさびしい気持ちになる。

湾岸戦争の時の出来事について、この記事を読んで考えさせられた。

【REAL HOT SPORTS 「イラク軍はクエートに侵攻。戦争がひとりのプロレスラーの運命を変えた」】

プロレスを通して代理戦争を行い、人々のナショナリズムを鼓舞した「鬼軍曹」サージェント・スローターは、逆に湾岸戦争ギミックで憎悪を買い、その栄光の座から転落した。

そして日本のアントニオ猪木は、同じ頃に一人の政治家として周囲の反対を振り切り、単身でイラクに行き、人質を解放した。イスラム教徒になった方がフセインと話ができると思い、イスラム教に改宗したという話は有名だ。

猪木の改宗に関して、イスラム教の教師と「イスラム教徒になるにはどうしたらいいですか?」「アラーを神と信じ、六信五行を行いなさい」「イスラム教徒をやめたいときはどうしたらいいですか?」「その時は首を切りなさい」みたいなやり取りがあったことはどこまで事実かわからないが、イスラム教の入りやすく出にくい感が伝わってくる。今はどうしているのかわからない。

そこで人質を解放した猪木は、再びイラクのバグダッドを目指した。

バグダッド空爆はすでに始まっていた。イランの空港の降り立った猪木は野宿までしてバグダッドを目指した。

なぜ、再び戦地に赴くのか?

「いや待て。人質解放が俺の目的でなかったはずだ。俺は戦争そのものを止めるためにここにいたんじゃなかったのか?」(猪木談)

これが「かっこいい」表の物語。

裏では石油の利権がうんぬんという話もあるが、少なくとも公に聞こえるようなこの発言や、人質解放、実際に戦下のイラクまで行く行為は彼にしかできなかった。常々「バカになれ」と言っていた通り、バカにしか見えない行為を彼はやってのけた。そしてバカが救った命もあったことは事実だ。

プロレスラーは戦うことが仕事だ。しかし、それはあくまでリングの上でのことであり、リングの外では皆平和を願っている。終戦記念日に平和に感謝するツイートをしている選手たちも多い。彼ら・彼女らプロレスラーは、やさしい平和主義者が大多数だ。

きっと、戦争をすることさせることより、戦争を止めることを望んでいるだろう。

そんな彼らが声をあげることができないならば、非常に悲しいことである。

たとえ賛成でも反対でも、彼らは声を上げねばならないのではないか。プロレスラーは、戦いを通して人々に勇気と力を与えなければならない。ただの強い弱いだけではなく、生き方がそうなってほしい。

政治に介入せよと言っているのではなく、プロレスラーとして生きている、あなたの声が聞きたいのだ。

無茶な願いかもしれないが、猪木信仰も無いが、フリーな立場なのであえてこう言いたい。

「プロレスラーよ、とことん馬鹿になれ。」

 

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