【書評】ソフィーの世界

ソフィーの世界

ソフィーの世界

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ヨースタイン ゴルデル
日本放送出版協会
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20年ぶりにソフィーの世界を読んだ。

近々、哲学に関するコンテンツを作りたいと思って、復習とネタ作りのために再び読んでみたわけだが、時代が大きく変わった今になっても色あせぬ輝きをもって読むことができた。

ひょんなことから謎の哲学講座を受けることになる、14歳の少女ソフィー・アムンセンは師であるアルベルト・クノックスと共に自身の存在、世界の存在について探求することになっていき、最後には(最初から?)大どんでん返しをするという物語だ。

世界中でベストセラーになったというが、私の周囲にはあまり読んだという人がいなかった。本が分厚いせいかもしれないし、たまたまなのかもしれない。

ただ、私が哲学や宗教に興味を持つキッカケになった本のひとつであり、非常に印象深く何度も読みたくなる本である。子供が大きくなったら読ませようと思っている本のひとつだ。

哲学に関する人間の叡智には驚くしかない。どの哲学者の意見も、よほど批判的な視線をもって見なければ論破するのは非常に難しく、自分のライフスタイルに反映させることが可能である。

しかし今は21世紀であり、再度、今にふさわしい哲学的思考をする必要があるだろう。

作者も別途触れているが、これが世界中で紹介されると知っていたならば東洋哲学も織り交ぜたものにしていたのに、というのはまさに惜しいところで、東洋哲学も網羅したソフィーの世界も是非見てみたかった。

しかし、西洋哲学だけでも知的な刺激、哲学的思考を養うためのドリルとしては十分すぎるほどであり、読了するころには世界に向けて新しい感じ方ができるようになる。

哲学は本質的な部分に目を向けることであり、そこから取り出される認識は多くの変化を生み出すようになる。たとえば「車」の本質的価値は「移動」であり、より移動に優れたもの、たとえば「どこでもドア」ができれば取って変わられ、車が生き残るには他の価値を訴えなければならなくなるのである。

本書では最後にニューエイジ思想やオカルティズム、オルタナティブなどについて批判的な表現もされているが、それらは相変わらず私たちの生活の中にあって問題を生じさせることも少なくない。ただ、玉石混交を見分ける手段として哲学が有効であるという考え方には賛同できる。注意を要するのは、批判はしているものの、多くの石の中には玉がある可能性があるという哲学者的な思考を慎重に保つべきだという姿勢は崩していないことであると述べておきたい。

物語中で哲学が具体的かつ易しい比喩で表現されているので、考えの大意を飲み込むことは難しくないが、正確な理解については各哲学者の本を読み、研究者による解説本を読む方が良いだろう。あくまで哲学入門の書である。

現在の認識とはまた変わってきた部分があるのは確かだが、哲学史を追うことによって、世界を認識する観点を得られることは大きなことだ。特に、多くの作家にとっては世界を創る作業に際して、この世界認識が重要である。借り物でない世界を描くには、創造者になって世界を認識させる必要があるのだから。

多くの刺激を与えたくれた本書に感謝と畏敬を表しつつ、未読の人々にも是非読んでほしいと胸をはって推薦したい本である。対象は「14歳以上の哲学的訓練がなされていない人」だそうだ。決して子供向けの本ではなく、慎重に読み進めていかなければ、つながりは断裂してしまうことだろう。歴史は鎖のように、いつも結び合って伸びているのだから、断裂は終わりを意味するのである。

ソフィーの世界

■内容(最高☆5つ):☆☆☆☆☆
■価格満足度(最高☆5つ):☆☆☆☆☆

あわせて、以下のガイド本もまた興味深いので、好きな人は見るとよい。

もう少し知りたい人のための「ソフィーの世界」哲学ガイド
須田 朗
日本放送出版協会
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