まだ酒飲んで消耗してるの?

お酒が減らせる練習帳
お酒が減らせる練習帳

posted with amazlet at 16.03.14
樋口 進
メディカルトリビューン
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先日、見苦しいものを見た。

朝にマクドナルドに行ったら、派手な服装をした若い女性が、アルコールの臭いをプンプン放ちながらソファー席で寝ているのである。

トレイの上のカップが倒れていて、ハンバーガーは食べ残しが乗ったまま、お構いなしに眠っていた。きっと、電車が終わっても飲み続け、始発を待とうとマックに入ったは良いが、眠気に負けて眠ってしまったのだろう。

昔から、酒と煙草は健康に被害を与えるものとして言われてきているが、ここへきて急速に煙草は失速している。あまりにも健康被害が叫ばれ、そして税金も高くなっているからだ。

しかし、酒はしぶとい。私はもう10年以上も前に止めたので何でも言えるが、酒も煙草と負けず劣らず健康に悪い。酒が無ければ助かったであろう命も毎年数え切れない。

しかし、酒はしぶとい。酒税が上がれば反対し、税制が変われば抜け穴を作って新商品を開発していく。酒よりも問題は無いだろう砂糖は健康ブームやメタボ診断の影響によって一気に干されてきている。砂糖は置き換え食の提案が進んでいるが、誰も酒については代替品を提案しない。不思議な時代になった。

しかし、酒はしぶとい。守られることのない少量の飲酒が健康に良いという話を繰り返しPRすることに余念が無い。最近の知見ではそれすら否定されているというのに、面の皮を厚くして繰り返しアピールし続ける。SNSのプロモーション広告並みにしつこくタチが悪い。

実に、酒はしぶとい。
このようになっている理由は「女性が飲酒をするから」である。

煙草が社会的にどんどん干されている最大の理由は「女性に嫌われた」からだ。健康だけでなく、美容にも悪影響であることが、煙草についてはうるさく言われ、女性たちが離れて行った。

一方、同じく美容にも健康にもいい効果があるとはいえない酒は、「女性に好まれる」努力を続けてしぶとく生存している。1990年代に酒類の需要増が見込めなくなった各メーカーが、女性をターゲットに宣伝活動を開始した結果である。気づけば女性が主役の酒類のCMは多くなり、「女性も飲む」という認識が浸透した。一昔前は、酒を飲む女性は少数派だったのである。

今の時代は、女性に睨まれたらうまくいかない。
歴史的に考えてみれば、日本においては煙草は歴史が浅い。

しかし酒については神話にも登場しているくらい、歴史が長い。
祭りごとにも祀りごとにも政にも、常に酒は共にあった。
一言で言って、酒は日本の文化を作っている一要素であると言っていい。

酒は人々にハレの日とケの日を区別させ、喜びを提供してきた。

そして、職人を尊ぶ日本の気質は、酒造家を職人とみなした。
それゆえ、酒も酒を造る人も、保護の対象となった。
だが、今は酒が振舞われることによって害悪の方が多い。

飲酒を控えさせたことによって鬱憤が積もり、それによって事件が増えた、そういう事例もあったそうだが、それは一時的な事象に過ぎない。

必要悪という悪は本来は存在せず、悪を断てない言い訳として使われる。
少々の混乱を厭わずに断罪してしまった方が世のためだ。

酒はハレの日のものではなく、すっかり日常化した。
酒によって起こる交通事故、疾病、事件が後を断たない。

多くの命が失われる原因であるアルコールを飲食店は頑張って提供する。
その提供をするために、過労死や労働問題を招いている店も少なくない。

それでもするのは、カネのなる木、それが酒だからだ。
酒とカネ、二つの中毒物質がこの状況を招いている。
そして、すっかり病みつきになった老害たちがその伝道師として暗躍している。
「酒を飲みたくなければ飲まなければいい」と言うのは愚かである。

酒はGDPには寄与しているが、生産性や競争力を著しく下げている。
酒の流通量が伸びれば、国際競争力は低下していき、いずれ貧しくなるだろう。
アヘンが流行った中国(清)を考えてみるといい。
いまだに「酒によって社会が円滑に回っている」という考えの人もいる。

カネを回してどうするのか。

経済学では、カネについては血液のようなものだと考える。カネが回るのは血行がいい状態と同じで、血行が良くなると健康になるのである。

人間は健康であることはもちろん大事だが、健康な体で何をするのかが大事であろう。健康は手段でしかない。血行を良くすることに終始する人生がおかしいのと同様に、カネが回ることが目的になった社会というのはおかしな社会なのである。

交通事故を減らしたいなら、酒を捨てるべきだろう。

青少年の非行を減らしたいなら、酒を捨てるべきだろう。

組織の生産性を上げたいなら、酒を捨てるべきだろう。

雇用を増やしたいなら、研究し努力して産業を作るべきだろう。

人口を増やしたいなら、健康な生活と家族の時間を増やすべきだ。
酒が人生を豊かにするというには、現代の豊かさは多様であり、他の方法も多い。その中で酒で人生を豊かにしなければならない理由はなく、一方で酒で人生が貧しくなる理由は非常に多いのだから、選択股として残すことの方がハイリスクである。
卒業・新年度シーズンは、ハメを外して事故の起こるシーズンである。

酒を捨て、健全な社会になることを願うばかりである。

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