マクドナルドに舞い降りた白髪の天使おばあちゃん

私は作業が煮詰まると、近くのマクドナルドに場所を移す。

少し前から、私の通うマクドナルドには大きな変化があった。

経営者が変わったのでもない、本社が赤字を抜け出したのとも関係ない、メニューの変化も関係ない、些細な変化なのだが、私はこれでこのマクドナルドを応援したくなった。

それが、マッククルーとして勤務し出したある「おばあちゃん」である。
「高齢の女性」と呼ばず、「おばあちゃん」と呼ぶのは、私が愛着を感じているからである。特に血縁は無い。見ず知らずの、特別な会話を交わしたわけでもないおばあちゃんだ。

このおばあちゃん、頭髪はほぼ真っ白で、やや背中も曲がり始めている。
予想としては年齢は若くても70代前半、下手すると80近いのではないかと。
クルーの制服が、残念ながら若い人向けのデザインなのでコスプレに見える。

(ちなみに、女性を見る目はあまり無いと思うので参考程度に考えてほしい)

基本的に業務はフロアの清掃。
おそらく、レジや製造はスピードの問題で難しいと判断されたのだろう。

ただ、このおばあちゃん、非常に上品なのである。
白髪はきれいにいつもまとめられ、服の着こなしもきっちりしていて品がある。

また、どんなお客さんに対しても、物腰柔らか。
全く見向きもしないで仕事に没頭したり、スマホに没頭している若造にも、必ず「失礼します」と一声かけて隣のテーブルを丁寧にふき取っていく。

コーヒーを床にこぼした中年男性の前で、
「お任せください」と替えのコーヒーを持ってきて、
モップを取り出し床の清掃を始める。
もちろん、その動作が特別機敏なわけではないが、至極丁寧である。

食後にトレイを片付けに行くと、清掃作業中の手を止めて自ら進んで受け取り、お礼まで言ってもらえる。こちらが恐縮し、自然に頭を下げてしまうくらいに丁寧な接客。こんなものはマクドナルドの接客マニュアルではきっとない。人格である。

白衣の天使ならぬ、「白髪の天使」を私は見たと思っている。
全く目立たないが、確実にこの店の雰囲気を良くしてくれている。
正直、最近のマクドナルドに辟易していた。

いつの間にか不潔で失礼な若者たちや、政治に向けて批判と怒りの声をあげる活動を頑張っているだろう中年、風呂にも入らず宿もなく、昼夜を問わず100円マックのみで長らく滞在する、客というにはあまりにもマナーの無い連中。店の利益に貢献せず、電力を食ってわざわざ携帯のワンセグでテレビを長時間見ている連中。

こういう人々のたまり場になりつつあったマクドナルド、そりゃ赤字にもなるのは当然だと思っていた。いっそ、潰れても文句は言わない。心が疲れる店だから。

そう考えていた。
しかし、白髪の天使をこの店は雇った。

お店の人手不足は聞いていたので、その中での決断だったのかもしれない。

上品なおばあちゃんにも何か事情があるのかもしれない。

雇用の背景は知らないが、彼女がいるだけでこの店を応援したくなった。

その上品でたどたどしい接客を見ているだけで、心が癒される。

また、自分も客としてのマナーに注意しようと心の帯を締められる。

おばあちゃんは他のクルーよりも仕事はできないと思う。
しかし、おばあちゃんは他の誰よりもサービスし、スマイルもゼロ円で配っている。

年齢は正確にはわからない。
もしかしたら本部が聞いたら怒るかもしれないし、やめさせちゃうかもしれない。
だから店舗名は言えないのだけど、そっと応援している。
お店の方も、やめさせないであげてほしい。
私はおばあちゃんの仕事ぶりが見たい。

給料を払ってこのおばあちゃんを雇ったこの店に感謝する。

がんばれ、おばあちゃん。またお店に行きます。
お体には気をつけてくださいね。

長寿社会を生きる : 美しく老いるために
野尻武敏
晃洋書房 (2016-03-11)

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